牛丼屋で"尊厳"を買った話

前日譚

ちなみに前日ではない

先日のオケオールの後、朝5時寒空の元に放り出された私達はとりあえず牛丼屋に向かいました。一睡もせず(というかカラオケって寝たくてもテレビ画面が延々と広告流すから寝れない)、ジャパリパークを絶叫合唱していたのでとてもお腹が空いていたからです。

そもそも朝5時に開店しているような飲食店は牛丼屋くらいしかありませんしね。

てかなんで朝から牛丼を食おうと思ったのか...

なーぜだっ?(*^^*)

真相は後ほどっ!☆

要求:安い朝食

さて入店しますと、店内は疎らで私達の他には3人ほどがテーブル席に掛けているのみでした。朝5時の牛丼屋が満員だったら怖いです。

特に理由もなく私達はカウンター席に腰を掛け、各々用意されたメニュー表を手に取りスマート長考。私はと言えば味など選ぶ余裕はありません。求めるのは値段です。コスパが悪くても安ければそれを求めます。おそらく私が払っている税金よりも使われている税金のほうが高いのです。わがままなことは言えません。

メニュー表を眺めて目で食事を行います。

エア朝食。

このように金銭的余裕のない私は激安牛肉を求めメニュー表を一瞥。オーバー400の商品を的確に眼中から外しつつ、ギリギリ300代を保つこの商品が目に止まりました。

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朝牛セット(398円)

もしかしたら、金銭にここまでシビアになる心が荒んだ私に「あったか」の文字が響いたのかもしれません。もしくは写真に映る立ち登る湯気に凍り固まったtrue my heartが癒されたのかもしれません。まさにハートフルストーリー。この場合のハートは傷の方ですが。

とりあえず私はこの商品を暫定1位、皇室継承順位で言うと秋篠宮殿下の立ち位置にこの「朝牛セット」を据えました。

しかし私はここで歩みを止めるわけには行きません。ひとつなぎの激安牛丼メニューを求め、中に3枚折り込む構造のメニュー表を開闢(かいびゃく)しますと、そこには高天原が…ではなく豊富な海の幸山の幸と玉子納豆味噌汁の無限の組み合わせが極限で有限値に…近づかないのであります。

嗚呼、「朝牛セット」は所詮、さらなる牛丼迷宮の序章に過ぎなかったのか…。私は少しの不安に逡巡の後、それ以上に安さの追求心が迷宮への歩程をさらに加速させたのでした。

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牛丼迷宮の第二層は定食の間です。牛丼屋に行って牛肉を食わない奴がいるのか…と思いましたが、おそらくいらっしゃるのでしょう。牛肉を使わないメニューは割と充実していました。しっかしながらまぁどいつもこいつも400越えでしたね。1人338円のメニューがいましたが見向きもしませんでした。納豆は好きでは無いのです。

闘争の後、私はメニュー表をめくる手に違和感を感じました。

 

 

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328円でヤンスカ!?

はて、もう今朝牛セットに対しては、ただ憧憬のようなものが色褪せ残っているのみです...。

もうその時の私はこの牛丼&ポケモンのコラボに思わず言葉を失ってしまいました。ポケモンについてはツイッターで得たピカチュウダークライポリゴン2オーキド博士以外の知識を持たないために「ポケモンの世界ってポケモン食ったりするのかな...」なんて思考が一瞬過ぎったりもしました。あ、ポケ盛ってそういう...

...感動のあまりその場で私は感涙を禁じ得ませんでした。まぶたの裏に溜まる涙をスクリーンに、牛丼店をまるで都内有名ホテルのレストランと夢想させました。激安メニューを探し当てる過程で高級店の幻影が見えるのはなんとも皮肉ですね。

私はこの牛丼メニューをもう一度見返した際、とある記述を見つけてしまいました。

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そう、この牛丼には問題がありました。どちらかというと私の方に問題があったと思いますが。

詰まるところこの牛丼、「キッズ」用なのです。

 

大学生がキッズなんて頼めるか

 

確かに私は変な意地を張ってバイトをせず、というかむしろバイトをしている人間のことを見下し、さらに親から頂くお小遣いで1ヶ月を耐え凌ぐ恥を恥とも思わぬ厚顔無恥な底辺学士過程であり、こういった背景踏まえれば、もう私は立派な「キッズ」であり、キッズ牛丼を腹一杯かきこむことが世間への懺悔になるのかもしれませんが、隣人たちの牛丼セットにサラダや味噌汁を付随させる古代中国の皇帝もびっくりな酒池肉林の様相を眼前で呈されては、流石にそのタイミングでポケ盛りキッズセットなんて冗談でも口にできないのであります。

まあこれは最悪の最悪の選択肢として残す事はいいものの、選んではいけない選択肢としてこっそり脳の奥の方に仕舞っておくことにしました。

最終章・あの日の僕ら

我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこに行くのか(ポール・ゴーギャン

 ゴーギャンの絵画テーマであったこの一節は、有史4000年における私達人類の歴史において最大の問いではないでしょうか。

私はその答えを牛丼屋で見つけてしまったかもしれません。

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ノーマル牛丼352円

 それに...

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syomori
 マイナス20円

牛丼って332円で食べられちゃうんだ。

結構リアルな方で「エーッ」っと絶叫してしまいました。

ここで牛丼それぞれのスペックをまとめますと

牛丼小盛     332円 

ポケ盛キッズ牛丼 328円 

朝牛(この時点で論外)

その差額たったの4円です。たった4円で脱キッズできるのです。私は4円で尊厳を買ったのです。

私は4円で尊厳を買ったのです。

もう後ろは振りかえりません(カウンター席なので)。

もうひたすら突き進む、攻撃あるのみです。